プロ・アマ問わず、投手の中には常識を覆すようなフォームを使用して活躍する選手が時折現れます。
選手個々が生き残りのために試行錯誤し辿り着いた投球フォームを紹介していきます。
UFO投法とは?
元広島東洋カープの山内泰幸投手が使用した投球フォームです。
右ひじを高く上げる姿が、ピンクレディーの大ヒット曲「UFO」の振り付けに似ていることから、「UFO投法」と名付けられました。
日本体育大学入学時の山内投手の投球フォームは、UFO投法よりも右ひじの位置が低く、トルネード投法のように上体をねじって投げていました。
ちょうど野茂英雄がプロデビューし活躍していた時期でしたが、山内投手は野茂投手のフォームの真似をした訳ではなく、当時はそのフォームが一番投げやすいフォームだったと語っています。
大学入学後、監督から「体をねじらなくても力が出せる」と言われフォームの改善に着手。
それと合わせて打者のタイミングを外せるようなフォームを探していたところ、UFO投法にたどり着きました。
山内投手の通算成績・受賞記録など
勝利 | 敗戦 | セーブ | 奪三振 | 自責点 | 防御率 | |
山内泰幸 | 45 | 44 | 1 | 508 | 331 | 4.40 |
- 新人王(1995年)
- 月間MVP(1995年5月)
- オールスターゲーム出場2回
大学時代には48回3分の2イニング連続無失点記録という記録を残し(後に、菅野智之(読売ジャイアンツ)が東海大学時代に更新)、日米大学野球ではMVPを獲得するなどの活躍を見せていました。
UFO投法のメリット
- 球速を上げる
- タイミングを外す
踏み出す側の足を上げ投球モーションに入るときに右ひじを肩の高さまで上げることで通常の投球フォームよりも右肘の可動域が大きくなることが、球速を上げる要因とされています。
また、足を上げた際に一時停止することで打者のタイミングを外すことが出来ます。
UFO投法のデメリット
- 球の握りが打者に丸見えになる
- 盗塁されやすい
山内投手は、UFO投法の欠点として、右肘だけを上げてしまうと握りが打者から丸見えになることと話しています。そのため、左手のグローブで隠しながら投げる必要がありました。
また、走者を背負った際には、右ひじを上げながらも投球モーションを小さくする必要があるため、球速を上げるために高く上げていた肘も低くなり、タイミングを外すために足を上げ一時停止するといったUFO投法のメリットが生かしきれないだけでなく、どうしても通常のクイックモーションよりもフォームが大きくなってしまうため盗塁を企図されやすくなります。
メリットとしてあげた「タイミングを外す」についても、アマチュア野球のように特定の打者との対戦機会が少ない場合は有効的ではあるものの、同じ打者と何度も対戦するプロ野球の世界では徐々にタイミングを合わせられてしまい通用しなくなります。
山内投手が活躍したのはプロ入り1年目(14勝10敗)と2年目(11勝8敗)。3年目以降は勝ち星も減り、防御率も5点台に下がりました。
【山内投手の年度別成績】
年度 | 勝利 | 敗戦 | 防御率 |
1995 | 14 | 10 | 3.03 |
1996 | 11 | 8 | 3.90 |
1997 | 7 | 11 | 5.21 |
1998 | 4 | 7 | 5.19 |
1999 | 4 | 4 | 5.89 |
2000 | 2 | 1 | 3.96 |
2001 | 3 | 3 | 5.05 |
2002 | 0 | 0 | 4.50 |
まとめ!
- 名前の由来はピンクレディーの名曲「UFO」の振り付け
- タイミングを外し球速をあげるフォーム
- 打者が慣れるとメリットが薄まる
山内投手は甲子園への出場経験こそないものの、高校3年の春の中国地区大会で優勝し、UFO投法を取り入れた大学時代も輝かしい成績を残しました。そんな山内投手もプロの世界では現役生活8年間のうち、大きく活躍できたのは最初の2年間程。
その後は怪我にも悩まされましたが、山内投手はのちに、「このフォームでなければ並以下の投手だったと思います。」と語っているように、山内投手にとってUFO投法は、自身にマッチした投球フォームだったようです。