2020年、今年も秋山翔吾(シンシナティ・レッズ)、筒香嘉智(タンパベイ・レイズ)、山口俊(トロント・ブルージェイズ)の3名のメジャーリーガーが誕生しました。
今では毎年のようにMLBに日本人野球選手が誕生しています。
そのパイオニア的な存在と言えば、近鉄バファローズやロサンゼルス・ドジャースで活躍した野茂英雄投手を思い出す方は多いのではないでしょうか。
その野茂投手が使用していた投球フォームがトルネード投法です。
トルネード投法とは?
トルネード投法とは、投手が海老反りをするように振りかぶったあと、打者に対して背中を見せるほどに大きく体をひねり、そこからの反発力を利用して一気に投球する投げ方。
野茂投手が近鉄バファローズ時代に、この独特なフォームで活躍したことから、球団がネーミングを募集してその名が付けられました。
野茂投手の通算成績・受賞記録など
野茂英雄 | 勝利 | 敗戦 | 奪三振 | 与四死球 | 自責点 | 防御率 |
NPB(5年) | 78 | 46 | 1204 | 607 | 368 | 3.15 |
MLB(12年) | 123 | 109 | 1918 | 946 | 932 | 4.24 |
- 最多勝利 NPB:4回(1990年~1993年)
- 最優秀防御率 NPB:1回(1990年)
- 最多奪三振 NPB:4回(1990年~1993年)、MLB:2回(1995年、2001年)
- 最多勝率 NPB:1回(1990年)
- 沢村栄治賞 1回(1990年)
- 最優秀選手 NPB:1回(1990年)
- 新人王 NPB(1990年)、MLB(1995年)
- 月間MVP NPB:2回、MLB:2回
- 野球殿堂競技者表彰(日本)
日米両国で輝かしい成績を残した野茂投手のトルネード投法。
野茂投手以外にも、トルネード風の投球フォームで投げる久保田智之(元阪神タイガース)や高校時代に「琉球トルネード」と言われた島袋洋奨(元福岡ソフトバンクホークス)などが、この投法に近い投げ方を採用しています。
【久保田智之の投球】
【島袋洋奨の投球】
数々のタイトルや賞を受賞した投法であるにもかかわらず、なぜ野茂投手のようなトルネード投法を採用する投手がなかなか現れないのでしょうか。
トルネード投法のメリットとデメリットから、その理由を解説していきます。
トルネード投法のメリット
- 球速と球威が増す
- リリースポイントが分かりにくい
トルネード投法の原点は野茂の父親にあります。
「腕だけでは速い球は投げられない、体全体で投げるように」と教えられた野茂投手が行きついたのがトルネード投法でした。
つまり、腕だけではなく体のひねりとその反発による勢いも利用することで、球速と球威を増すことが出来るのです。
また、振りかぶってからリリースまでの間に打者に背中を見せるまで体をねじる投法であるため、球持ちが長くなりリリースが分かりにくくなります。
トルネード投法のデメリット
- 制球が悪くなりやすい
- 習得が困難
- 体への負担が大きい
- 走者がいる時には使用できない
打者に対して背中が見えるほど体を大きくねじる投げ方は、体軸や目線がブレやすくなり制球が悪くなりがちになります。また、それを克服するためには強靭な下半身と高いバランス感覚を身に付ける必要があるため習得が困難な投げ方であり、どうしても体への負担が大きくなってしまいます。
トルネード投法は投球モーションが大きくなるため走者がいる状況では使用できません。
まとめ
- 野茂の父親の発した言葉がトルネード投法の原点
- 球速と球威が増す
- 制球が困難で体への負担も大きい
野茂投手にとって体をねじる投げ方は、小・中学校時代から使用していた投球フォームでしたが、高校時代まではトルネード投法と言えるほどまでは体を大きくねじってはいませんでした。
社会人を経て近鉄へ入団する際には「投球フォームの改造をしないこと」を入団条件にするなど、自身の投球フォームに確かな自信を持っていました。
野球だけに限らず、すべてのスポーツにおいて基本はとても大切なことです。
しかし、自分自身には何が合っているのか、どんな投げ方が最高のパフォーマンスを発揮するのかを考え貫き通す意思の強さがあったからこそ野茂投手のトルネード投法が生まれたのでしょう。
そして、投球フォームへの強い思いと習得の難しさが、トルネード投法は「誰にも真似できない」と言われる所以なのかも知れません。