野球用語

ヘッドスライディングをする意味、メリットは?一塁は遅い?

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2020年は春の選抜に続き、夏の甲子園も中止になりました。毎年、球児の全力プレーに勇気をもらっていた方も多いと思います。

そんな高校球児の全力プレーの代名詞といえば、ヘッドスライディングではないでしょうか。ヘッドスライディングは、最後まであきらめない姿として多くの方の感動を呼び、高校野球ファンからは支持を得ているプレーの1つです。

 

ヘッドスライディングとは、目標とする塁に向かって走りながら両手を前に出して塁に飛びつくように頭から滑り込むことをいいます。

 

ここでは、ヘッドスライディングのメリットとデメリット、そして、高校野球における1塁ヘッドスライディングの持つ意味などについて取り上げていきます。

ヘッドスライディングのメリットとデメリット

メリット
  • 審判へのアピール
  • チームの士気向上
  • 見ている人に勇気と感動を与える
  • タッチプレーを避けることが出来る

 

デメリット
  • 突き指や骨折、肩の脱臼などの怪我に繋がる

 

タッチプレーを避ける目的以外のヘッドスライディングのメリットは、「良い印象」を与えるという非科学的なものとなります。これでは、デメリットとしてあげた怪我のリスクの方が目立ち、ヘッドスライディングをすることはタブーと捉える見方が多くなるのも致し方ありません。

 

2007年の北京五輪予選の台湾戦で、川崎宗則選手がチームを鼓舞しようと平凡なショートゴロで一塁へヘッドスライディングをしました。これを見ていたイチロー選手から「カッコ悪い。俺のいちばん嫌いなことをした」と説教を受けています。

一塁ベースまでの到達時間は駆け抜けた方が速いと言われ、ヘッドスライディングをせずに駆け抜けた方が審判も見やすい。さらに怪我のリスクも高まるとし、非合理的でプロらしからぬプレーだと切って捨てたのです。

 

高校球児にとっては、後がない状況で、何とかセーフになろうと懸命になるあまり、ベースが見えた瞬間に思わず飛び込んでしまうという気持ちはわからないでもありません。しかし、プロ野球の世界では、野球をすることは仕事であり、プロである以上は自ら怪我のリスクを取りに行くべきでなく、大リーグでも一塁へのヘッドスライディングは「歓迎されない行為」とされています。

一塁へのヘッドスライディングより駆け抜けた方が速い?

「一塁へはヘッドスライディングをするよりも駆け抜けた方が速い」とは、野球界で定説とされる考え方です。
そんな中、2018年に立命館大学スポーツ健康科学部の岡本直輝教授らが学会で「ヘッドスライディングをする方が駆け抜けるよりも速い」という結論を発表しました。

 

15人を対象に行われた調査は、ヘッドスライディングの方が速かった選手は12人、駆け抜けた方が速かった選手は3人で、統計全体でもヘッドスライディングの方が0.04秒ほど早く、距離に換算して30~40cmの差になるというものでした。また、ヘッドスライディングする方が速い選手ほど、手を突く場所がベースに近く、踏切の足よりも頭が大きく前に出る傾向があることが分かりました。

 

これまでの非科学的な根拠だけでなく、「技術があれば」一塁への到達が速くなることが立証されたことにより、指導者は怪我のリスクを減らすためのトレーニングを取り入れていくことが必要になったということが出来ます。

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ヘッドスライディングまとめ!

進塁方向以外のヘッドスライディング以外にも、牽制球に対する帰塁のヘッドスライディングというものもあります。この場合のヘッドスライディングは、ベースを駆け抜けることが出来ず、タッチプレーを避けるという意味で理に適っていると言えます。

 

立命館大学の岡本教授の学会での発表は、これまでの定説を覆す内容ではありますが、デメリットである怪我のリスクを減らすものではありません。それでも、「セーフになりたい」という思いが強い選手ほど一塁へのヘッドスライディングは行われます。

一塁へのヘッドスライディングが是か非かの議論はありますが、選手の皆さんは怪我には十分に気を付けていただき、しっかりとした技術を身に付けた上でヘッドスライディングを行って下さい。



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