ビーンボールとは、投手が打者の頭部に当てようと故意で狙った投球のこと。
公認野球規則によってビーンボールは禁止されており、審判員がビーンボールと認めた際には、投手だけでなく、そのボールを投げるように指示した監督も退場となります。
MLBでは平均的に1シーズン当たり、1500球近くのビーンボールが投げられているとも言われています。
頭部付近への投球が、故意でのものか過失でのものかの判断は審判員に委ねられるため、投手が故意で狙っていたとしても審判員が過失と捉えた場合には退場などの処分は課せられません。
故意か過失か関係なく、頭部へ当ててしまった場合に即退場となる危険球とは区別されます。
しかしながら、ビーンボールが投げられると乱闘となる場面も見られ、退場者を出したり、警告試合が宣告されたりもします。
ビーンボールとブラッシュボール
ビーンボールと似た意味を持つ言葉にブラッシュボールというものがあります。
ブラッシュボールとは、打者を仰け反らせる目的で投手が行う胸元への投球のこと。
ビーンボールとブラッシュボールは、打者の体付近に投げ込む投球としては同じ意味を持っていますが、ビーンボールが当てても良いと相手を威嚇する目的で使われるのに対し、ブラッシュボールは、当てるつもりはなく、配球の組み立て上、次の投球を生かすために体を仰け反らせることが目的であると区別することが出来ます。
昔、大洋ホエールズが秘密のトレーニングとしてビーンボールの練習をしているとのうわさが球界に流れた際、当時、読売ジャイアンツでコーチをしていた藤田元司は、「相手がビーンボールで来るなら、こちらはブラッシュボールでお返ししてやればいい」と話していたといいます。
ここまで来てしまうと、どっちもどっちという気もしてしまいます。
ビーンボールが起こした事件
※週刊ベースボールより引用
1968年9月18日の阪神タイガース対読売ジャイアンツ(甲子園球場)
激しい優勝争いをしていた両チームは、前日には阪神がサヨナラ勝ちし、迎えた当日はダブルヘッダー。第1試合目は阪神がサヨナラ勝ちして首位ジャイアンツとのゲーム差を「0」として迎えた第2試合目。
この試合、阪神の先発は1964年に29勝を挙げ沢村栄治賞を受賞したバッキー投手でしたがまさかの大乱調。4回には4点を奪われ打席には初回に死球を与えている王貞治を迎えます。
この打席でバッキーが投じた初球は頭部付近へ。続く2球目もひざ元への暴投(死球にはならず)。この1球目は明らかなビーンボールでした。
2球目がひざ元へ来たことで王は怒りでマウンドに向かいはしたものの、バッキーと言葉を交わして打席に戻りかけたところ、王の師匠でもあるジャイアンツの荒川コーチが血相を変えてマウンドへ。そのままバッキーに蹴りを入れ、バッキーも右手でカウンターパンチ。そのまま両軍入り乱れての大乱闘となりました。
荒川コーチにパンチを見舞ったバッキーは、右手親指付け根を骨折。
この年はそのまま登板はなく、翌年には近鉄に移籍したが1勝も挙げることができずに引退しています。
なお、バッキーと荒川コーチが退場となった後、代わりに登板した投手が打席の王の頭部に死球を与えてしまいます。王はタンカで運ばれ病院に向かい、グランドでは再び大乱闘。球場のファンも次々にグランドに降りてきて異様な雰囲気となりました。
バッキ―投手の成績を紹介しておきます。
ジーン・マーティン・バッキーの成績と主なタイトル・表彰
防御率 | 勝利 | 敗戦 | 奪三振 |
2.34 | 100 | 80 | 825 |
- 最多勝利 1回(1964年:29勝)
- 最優秀防御率 1回(1964年:1.89)
- 沢村栄治賞 1回(1964年)
- ベストナイン 1回(1964年)
この事件は、「日本球界衝撃の乱闘TOP10」の第1位に選ばれています(2016年 週刊ベースボール)
ビーンボールまとめ!
- 頭部付近を狙った投球
- 審判がビーンボールと判断した場合は投手ならびに指示を出した監督も退場となる
- 「ビーンボール」と「ブラッシュボール」は目的が異なる
ビーンボールはスポーツ精神に反した投球です。
どんな理由があったとしても、故意で頭部付近にボールを投げることは、打者の選手生命を奪う恐れもあり大変危険な行為です。
投手の皆さんは、決してこのような行為を起こさないようにしましょう。