日本球界では、読売ジャイアンツと東京ヤクルトスワローズの対戦は「TOKYOシリーズ」、阪神タイガースとオリックス・バファローズの対戦は「関西ダービー」と呼ばれることがあります。
これらの対戦は本拠地の近いチーム同士の対戦であり、各チームの企画により、このように呼ばれることがあるようです。
一方で、メジャーリーグにも「○○シリーズ」と呼ばれるような対戦は多くあり、なかでもサブウェイシリーズは最も有名なものです。
今回の記事では、このサブウェイシリーズについて解説します。
サブウェイシリーズとは?
サブウェイシリーズ(Subway Series)とは、ニューヨーク市内に本拠地を持つチームの対戦のことです。
現在、このようなチームはニューヨーク・ヤンキースとニューヨーク・メッツの2チームだけですが、かつてはブルックリン・ドジャース(現在のロサンゼルス・ドジャース)とニューヨーク・ジャイアンツ(現在のサンフランシスコ・ジャイアンツ)も市内に本拠地を持っており、これらのチーム同士の対戦はサブウェイシリーズと呼ばれています。
サブウェイシリーズの「サブウェイ」とは地下鉄のことであり、市内の地下鉄を乗り継ぐことにより、それぞれの本拠地の間を移動することができるため、このように呼ばれるようになりました。
現在では、ヤンキースの本拠地であるヤンキー・スタジアムと、メッツの本拠地であるシティ・フィールドの間は、地下鉄の4系統と7系統を利用することで移動できます。
サブウェイシリーズの歴史
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サブウェイシリーズの歴史は長く、最初のサブウェイシリーズは1889年に行われたニューヨーク・ジャイアンツ対ブルックリン・ブライドグルームスのワールドシリーズとされています。
なお、当時のニューヨークには地下鉄はなく、後の時代になりサブウェイシリーズと名付けられたため、この対戦はサブウェイシリーズではなくトロリーシリーズと呼ぶべきという意見もあります。
1904年に地下鉄が開通すると、ヤンキース、ドジャースおよびジャイアンツの本拠地間を地下鉄で移動することが可能になり、サブウェイシリーズという呼称も広く用いられるようになりました。
なお、この時点では、サブウェイシリーズとは「ニューヨーク市内のチームによるワールドシリーズ」のことであり、ヤンキース対ドジャースもしくはヤンキース対ジャイアンツのワールドシリーズのことを指していました。
これらの3チームは強豪であったため、サブウェイシリーズは頻繁に開催されました。
シリーズ | 開催年 |
ヤンキース対ドジャース | 1921、1922、1923、1936、1937、1951 |
ヤンキース対ジャイアンツ | 1941、1947、1949、1952、1953、1955、1957 |
しかし、1958年にドジャースおよびジャイアンツはカリフォルニア州に移転したため、サブウェイシリーズは開催されなくなりました。
そこで、1962年にニューヨーク市内にて新たにメッツが誕生しました。
ただ、メッツがワールドシリーズに進出する機会は少なかったため、サブウェイシリーズはなかなか開催されないままでした。
一方で、1997年より交流戦が開催されるようになったため、ワールドシリーズでなくてもヤンキースとメッツが対戦するようになり、これもサブウェイシリーズと呼ばれるようになりました。
そんな中、2000年に、ついにヤンキース対メッツのワールドシリーズが実現します。
このとき、シリーズを記念して、本拠地を結ぶ4系統と7系統の地下鉄は、それぞれヤンキースとメッツのチームカラーを反映させた塗装になりました。
また、観戦者は地下鉄の料金が無料になるといった特典もありました。
なお、結果的にワールドシリーズは4勝1敗でヤンキースが制覇しています。
これ以降、ヤンキース対メッツというワールドシリーズは開催されていませんが、交流戦での対戦は毎年行われており、通算ではヤンキースがメッツに対して60勝44敗となっています。
その他のシリーズ
メジャーリーグにはチームが30チームあるため、サブウェイシリーズのような「本拠地の地域が同じチームの対戦」は多くあります。
ここでは、そのようなシリーズを紹介していきます。
① ローン・スターシリーズ(Lone Star Series)
[ヒューストン・アストロズ 対 テキサス・レンジャーズ]
これらの2チームは、テキサス州に本拠地を置いています。
テキサス州の旗には白い星が1つ描かれており、テキサス州はローン・スター・ステートという愛称を持つことから、このように呼ばれるようになりました。
アストロズが2013年からアメリカン・リーグに移籍したことにより、この2チームの対戦が大きく増加し、通算ではレンジャーズが115勝90敗となっています。
② I-94シリーズ(I-94 rivalry)
[シカゴ・カブス 対 ミルウォーキー・ブルワーズ]
カブスの本拠地シカゴはイリノイ州、ブルワーズの本拠地ミルウォーキーはウィスコンシン州ですが、本拠地が極めて近い(134 km)ことで知られています。
シカゴとミルウォーキーの間はI-94という高速道路で結ばれていることから、このように呼ばれています。
ブルワーズは1999年からナショナル・リーグに移籍したことにより、対戦が増加し、通算ではカブスの189勝180敗となっています。
③ フリーウェイシリーズ(Freeway Series)
[ロサンゼルス・ドジャース 対 ロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム]
これらのチームの本拠地であるロサンゼルスには、網目のように高速道路が敷かれているため、このように呼ばれています。
異なるリーグに所属しているため、対戦は交流戦のみとなっており、ワールドシリーズでの対戦はまだありません。
通算ではエンゼルスの70勝54敗となっています。
④ ベイブリッジシリーズ(Bay Bridge Series)
[サンフランシスコ・ジャイアンツ 対 オークランド・アスレチックス]
これらのチームの本拠地であるサンフランシスコとオークランドは、「サンフランシスコ・オークランド・ベイブリッジ」という橋により結ばれているため、このように呼ばれています。
異なるリーグに所属しており、1989年にはジャイアンツ対アスレチックスというワールドシリーズが開催されています。
このときは4勝0敗でアスレチックスがワールドシリーズ制覇を果たしています。
また、交流戦での対戦も行われており、通算ではアスレチックスの64勝60敗となっています。
⑤ クロスタウンクラシック(Crosstown Classic)
[シカゴ・カブス 対 シカゴ・ホワイトソックス]
カブスの本拠地であるリグレー・フィールドはシカゴの北部、ホワイトソックスの本拠地であるギャランティード・レート・フィールドは南部にあることから、「都市を縦断する」という意味で、このように呼ばれています。
異なるリーグに所属していますが、シリーズの歴史は長く、1906年のワールドシリーズで対戦し、ホワイトソックスが制覇しています。
レギュラーシーズンでは、通算でホワイトソックスが62勝60敗と拮抗しています。
2006年5月20日の対戦では、カブスの捕手のマイケル・バレットと、ホワイトソックスの捕手のA.J.ピアジンスキーが大乱闘を起こしており、シリーズの名場面となっています。
⑥ オハイオカップ(Ohio Cup)
[シンシナティ・レッズ 対 クリーブランド・インディアンス]
どちらのチームもオハイオ州に本拠地を置いていることから、このように呼ばれています。
異なるリーグに所属しているため、対戦は交流戦のみとなっており、ワールドシリーズでの対戦はまだありません。
通算ではインディアンスの63勝50敗となっています。
⑦ シトラスシリーズ(Citrus Series)
[マイアミ・マーリンズ 対 タンパベイ・レイズ]
これらの2チームは、フロリダ州に本拠地を置いています。
フロリダ州はオレンジやミカン、グレープフルーツなどの柑橘類の生産地として有名であるため、このように呼ばれています。
異なるリーグに所属しているため、対戦は交流戦のみとなっており、ワールドシリーズでの対戦はまだありません。
通算ではレイズの61勝56敗となっています。
⑧ ベルトウェイシリーズ(Beltway Series)
[ボルチモア・オリオールズ 対 ワシントン・ナショナルズ]
これらのチームの本拠地であるボルチモアとワシントンDCは、近いだけでなく、どちらも環状の高速道路(Beltway)を持っていることから、このように呼ばれています。
異なるリーグに所属しているため、対戦は交流戦のみとなっており、ワールドシリーズでの対戦はまだありません。
通算ではオリオールズの41勝33敗となっています。
まとめ
- サブウェイシリーズとは、ニューヨーク市内に本拠地を持つチームの対戦のこと。
- 現在では、サブウェイシリーズとはニューヨーク・ヤンキース対ニューヨーク・メッツの対戦を指すが、かつてはヤンキースとブルックリン・ドジャースおよびニューヨーク・ジャイアンツのワールドシリーズのことを指していた。
- メジャーリーグには、サブウェイシリーズの他にも「本拠地の地域が同じチームの対戦」が多くある。