プロ野球の珍プレー集などで、外国人の選手がデッドボールを受け、相手投手を追いかけたり、捕手と掴み合ったりして大乱闘となる映像をご覧になったことがあると思います。
真剣勝負の中で痛みを与えられたことと、怪我に繋がる投球をされたことに対する怒りが爆発し、そのような行為になると考えられます。
しかし、同じような痛みや怪我に繋がるにも関わらず、自打球に対してそのような光景を見たことはありません。
自打球を直訳すると「自分で打ったボール」。
つまり、加害者も被害者も自分自身であるため、怒りをぶつける相手がいないのです。
自打球とは
自打球とは、打者が打った打球がバッターボックスを出ていない状態で打者の身体に触れた場合に用いられる野球用語です。
ルール上は、ファウルボールとなりボールデッドとなります。
自打球は、「バッターボックスを出ていない状態」であったとしても、この行為が打球の進路を妨害するために意図的に行ったものだと審判が判断した場合には、打者はアウトとなります。
自打球の当たる場所でもっとも多いのは、打者がスイングする際に踏み出す側の足(脚)です。140km前後のボールをバットで跳ね返した直後、勢いのある初速のスピードで当たるため、骨折などの重大な怪我に繋がる原因となります。
そのため、現代野球では、怪我を防止するために足にレガースを着けてプレーをする選手が増えています。
自打球は、足以外にも様々な場所に当たる場合があります。
この動画にあるように、地面から跳ね返ってきた打球でも、バッターボックス内で且つ故意で当たっていない場合は自打球となりファウルボールになります。
それでは、自打球になりやすい打者はどのような選手なのでしょうか。
また、その原因は何なのでしょうか。
自打球の多い打者
2018年のAbema TVの横浜DeNA対広島戦の生中継中に、「プロ野球 セントラルリーグ自打球ランキング」が発表されています。
※2018年8月17日時点での数字、ランキングは以下の通り。
順位 | 選手名 | 所属チーム | 回数 |
1 | 京田 陽太 | 中日ドラゴンズ | 23 |
2 | 大島 洋平 | 中日ドラゴンズ | 15 |
3 | 田中 広輔 | 広島東洋カープ | 11 |
3 | 糸井 嘉男 | 阪神タイガース | 11 |
3 | 坂口 智隆 | ヤクルトスワローズ | 11 |
6 | 山田 哲人 | ヤクルトスワローズ | 10 |
このランキングをご覧になって、明らかな偏りに気付いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
上位5人は左打者なのです。
この日の試合で解説を務めた、岡島秀樹氏(読売ジャイアンツやボストン・レッドソックスなどで活躍)は、「当てるのがうまい人が、(自打球が)多いと思いますよ。それと引っ張りのバッターですね。流すよりも、強引に引っ張る人って自打球が多いです」と解説しています。
右打者でも、上記のランキング表には入っていませんが、7位に長距離砲のビシエド(中日ドラゴンズ)がランクインしており、そのことについて岡島氏は「アメリカはバッターのデータからシフトを敷いていますが、それでも強引に引っ張って(自打球を)当てる人が多いです」と話しており、自打球が当たりやすい選手の特性を説明しています。
自打球まとめ
- 自分で打った打球がバッターボックス内で自身の身体に触れたときの野球用語
- 自打球はファウルボールとなりボールデッド
- 左打者や引っ張る打者に多く見られる
2020年も2軍戦では阪神タイガースの小幡選手(鼻骨骨折)やオリックスの頓宮選手(左脛(けい)骨骨折)が自打球によって大怪我をしています。
その一方で、自打球が思わぬ結果をもたらした例もあります。
2009年6月に、阪神タイガースのクレイグ・ブラゼル選手が3球連続で自打球を受けた後にホームランを放つという珍しいプレー。
当時のサンケイスポーツには、「自打球3連発悶絶ダ~ン」と揶揄とも取れる記事が出ましたが、確かに、自打球が生んだホームランと言っても良いかも知れませんね。