2020年、秋山翔吾と筒香嘉智の2人の野手が、新たにメジャーリーグに挑戦にしました。今まで、多くの野手がメジャーリーグに挑戦してきましたが、首位打者や盗塁王などの打撃タイトルを獲得した日本人選手はイチローしかいません。
イチローはメジャーリーグで19年にわたりプレーし、メジャーリーグ記録となるシーズン262安打や、10年連続200安打を記録しました。
今回の記事では、イチローのメジャーリーグでの成績や活躍について解説します。
イチロー、メジャーでの活躍
1991年のドラフトでオリックス・ブルーウェーブに入団したイチローは、日本球界史上初となるシーズン200安打、7年連続の首位打者を達成するなど、日本球界を代表する打者として活躍していました。
そんなイチローは、2000年のオフシーズンにポスティングシステムを利用し、シアトル・マリナーズに3年1400万ドルという契約で入団します。
当初、イチローがメジャーリーグで通用するか、疑問視する声が多くありましたが、イチローは開幕から安打を量産し、オールスターゲームに選出されました。
最終的には歴代9位となる242安打、打率.350、56盗塁を記録し、アジア人として初めての首位打者と盗塁王を獲得したため、史上2人目となるMVPと新人王の同時受賞を果たしています。
下の動画は、2001年のイチローの活躍をまとめたものです。
イチローはその後も安定して活躍を続け、2002年には打率.321、208安打、2003年には打率.312、212安打を記録します。
その活躍が認められ、イチローは2003年のオフシーズンに4年4400万ドルという契約を新たにマリナーズと結びました。
2004年、イチローは5月に月間50安打、7月に月間51安打、8月に月間56安打という驚異的なペースで安打を量産します。
10月1日のテキサス・レンジャーズ戦では、ジョージ・シスラーのシーズン安打記録(257本)を破る258本目の安打を放ち、84年ぶりに記録を塗り替えました。
最終的にイチローは262安打を記録し、2度目の首位打者(打率.372)を記録しています。
しかし、2005年には打率.303、206安打と少し成績を落としてしまいました。
それでも、イチローは復活を遂げ、2006年にはリーグ6位となる打率.322、2007年にはリーグ2位となる打率.351を記録しました。
なお、シーズン中にはマリナーズと5年9000万ドルという契約を結んでいます。
その後、2008年には打率.310、213安打を記録し、ウィリー・キーラーが残した史上最長記録に並ぶ8年連続200安打を達成しました。
さらに、2009年にはリーグ2位となる打率.351、225安打を記録し、キーラーの記録を108年ぶりに更新しています。
そして、2010年には214安打を記録し、連続200安打を10年に延ばしました。
しかし、2011年には5月以降に不振に陥り、打率.272、184安打でシーズンを終えてしまったため、連続200安打が途切れてしまいます。
2012年も開幕から打率が上がらず、7月23日にトレードでニューヨーク・ヤンキースに移籍してしまいました。
なお、このトレードは、チームの若返りや新しい環境での刺激を考えたイチローが、自ら志願したものだったようです。
ヤンキースへの移籍後、イチローは調子を上げ、打率.322を記録したため、オフシーズンにはFAになりましたが、2年1300万ドルの契約でヤンキースに残留しました。
しかし、2013年には再び打率が下降し、打率.262、136安打という成績に終わってしまいます。
それでも、8月21日のトロント・ブルージェイズ戦では、日米通算4000安打を達成しました。
2014年には打率を.284まで上げましたが、出場機会が減少したため、102安打に終わってしまいます。
その後、イチローはFAとなりましたがマイアミ・マーリンズと1年200万ドルという契約を結びました。
しかし、夏に34打席連続無安打と不振に陥ったため、メジャーリーグ移籍後では最低となる打率.229、91安打に終わってしまいます。
それでも、マーリンズの球団社長がイチローの第4の外野手としての活躍を認めたため、1年契約でマーリンズに残留しました。
2016年、イチローは開幕から好調を維持し、8月7日のコロラド・ロッキーズ戦でメジャーリーグ通算3000安打を達成します。
なお、メジャーリーグ16年目での達成はピート・ローズと並ぶ最速記録であり、三塁打での達成はポール・モリター以来、史上2人目でした。
最終的に、この年は打率.291、95安打という成績を残し、マーリンズに残留することが決まりました。
しかし、2017年には成績を落とし、打率.255、50安打という成績で終わってしまったため、オフシーズンにはFAとなります。
その後、所属球団がなかなか決まらない状態でしたが、2018年の3月7日に1年契約で古巣のマリナーズに復帰することが決まりました。
ところが、15試合の出場で打率.205と苦戦したため、5月3日にマリナーズと「スペシャルアシスタントアドバイザー」として契約し、シーズン終了まで試合に出場しないことを発表します。
その後、イチローは新たにマリナーズとマイナー契約を結び、3月20日にはメジャーリーグに昇格して、東京ドームで開催されたオークランド・アスレチックスとの開幕シリーズに出場しました。
そして、イチローは開幕シリーズの終了後に現役引退を発表します。
開幕シリーズ最終戦の8回裏、守備の交代が告げられた際には、イチローは東京ドームのファンからスタンディングオベーションを受けました。
イチローのプレースタイル
イチローはメジャーリーグにて、走攻守の全てにおいて高い評価を受けていました。
まず、打撃に関しては、メジャーリーグでは単打を量産しており、2004年に放った262安打のうち、225本が単打でした。
また、三振と四球が少なく、特に三振は最多でも2010年の86三振となっています。
一方、守備では強肩と正確な送球を武器としており、右翼手としてシーズン最多刺殺を7度記録しています。
また、捕球技術も極めて高かったため、2001年から10年連続でゴールドグラブを受賞しました。
さらに、走塁に関しては、2001年に盗塁王を獲得し、メジャーリーグでは通算509盗塁を記録しています。
しかし、イチローは盗塁数より盗塁成功率を重視しており、通算500盗塁を達成している選手では史上4位となる盗塁成功率.813を記録しました。
下の動画は、イチローがメジャーリーグ通算500盗塁を記録したときのものです。
イチローの年度別成績
年度 | チーム | 試合 | 安打 | 本塁打 | 打点 | 盗塁 | 打率 | OPS |
1992 | オリックス | 40 | 24 | 0 | 5 | 3 | .253 | .581 |
1993 | オリックス | 43 | 12 | 1 | 3 | 0 | .188 | .478 |
1994 | オリックス | 130 | 210 | 13 | 54 | 29 | .385 | .994 |
1995 | オリックス | 130 | 179 | 25 | 80 | 49 | .342 | .976 |
1996 | オリックス | 130 | 193 | 16 | 84 | 35 | .356 | .926 |
1997 | オリックス | 135 | 185 | 17 | 91 | 39 | .345 | .927 |
1998 | オリックス | 135 | 181 | 13 | 71 | 11 | .358 | .932 |
1999 | オリックス | 103 | 141 | 21 | 68 | 12 | .343 | .984 |
2000 | オリックス | 105 | 153 | 12 | 73 | 21 | .387 | .999 |
2001 | SEA | 157 | 242 | 8 | 69 | 56 | .350 | .838 |
2002 | SEA | 157 | 208 | 8 | 51 | 31 | .321 | .813 |
2003 | SEA | 159 | 212 | 13 | 62 | 34 | .312 | .788 |
2004 | SEA | 161 | 262 | 8 | 60 | 36 | .372 | .869 |
2005 | SEA | 162 | 206 | 15 | 68 | 33 | .303 | .786 |
2006 | SEA | 161 | 224 | 9 | 49 | 45 | .322 | .786 |
2007 | SEA | 161 | 238 | 6 | 68 | 37 | .351 | .827 |
2008 | SEA | 162 | 213 | 6 | 42 | 43 | .310 | .747 |
2009 | SEA | 146 | 225 | 11 | 46 | 26 | .352 | .851 |
2010 | SEA | 162 | 214 | 6 | 43 | 42 | .315 | .754 |
2011 | SEA | 161 | 184 | 5 | 47 | 40 | .272 | .645 |
2012 | SEA/NYY | 162 | 178 | 9 | 55 | 29 | .283 | .696 |
2013 | NYY | 150 | 136 | 7 | 35 | 20 | .262 | .639 |
2014 | NYY | 143 | 102 | 1 | 22 | 15 | .284 | .664 |
2015 | MIA | 153 | 91 | 1 | 21 | 11 | .229 | .561 |
2016 | MIA | 143 | 95 | 1 | 22 | 10 | .291 | .730 |
2017 | MIA | 136 | 50 | 3 | 20 | 1 | .255 | .649 |
2018 | SEA | 15 | 9 | 0 | 0 | 0 | .205 | .460 |
2019 | SEA | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | .000 | .167 |
NPB | 9年 | 951 | 1278 | 118 | 529 | 199 | .353 | .943 |
MLB | 19年 | 2653 | 3089 | 117 | 780 | 509 | .311 | .757 |
- SEA:シアトル・マリナーズ
- NYY:ニューヨーク・ヤンキース
- MIA:マイアミ・マーリンズ
各年度の太字はリーグ最高
イチローにまつわるエピソード
① メジャーリーグでの3000本安打
イチローは2016年に通算3000安打を達成しましたが、これはアジア人としては初めてでした。
2020年のシーズン終了時点で、メジャーリーグ通算3000安打は32人が達成しています。
選手 | 安打数 | 選手 | 安打数 |
ピート・ローズ | 4256 | ジョージ・ブレット | 3154 |
タイ・カッブ | 4191 | ポール・ウェイナー | 3152 |
ハンク・アーロン | 3771 | ロビン・ヨーント | 3142 |
スタン・ミュージアル | 3630 | トニー・グウィン | 3141 |
トリス・スピーカー | 3514 | アレックス・ロドリゲス | 3115 |
デレク・ジーター | 3465 | デーブ・ウィンフィールド | 3110 |
カール・ヤストレムスキー | 3419 | イチロー | 3089 |
ホーナス・ワグナー | 3415 | クレイグ・ビジオ | 3060 |
プール・モリター | 3319 | リッキー・ヘンダーソン | 3055 |
エディ・コリンズ | 3315 | ロッド・カルー | 3053 |
ウィリー・メイズ | 3283 | ルー・ブロック | 3023 |
エディ・マレー | 3255 | ラファエル・パルメイロ | 3020 |
ナップ・ラジョイ | 3242 | キャップ・アンソン | 3011 |
アルバート・プホルス | 3236 | ウェイド・ボッグス | 3010 |
カル・リプケン | 3184 | アル・ケーライン | 3007 |
エイドリアン・ベルトレ | 3166 | ロベルト・クレメンテ | 3000 |
通算3000安打はアメリカ野球殿堂入りの基準とされており、達成者のほとんどが殿堂入りを果たしています。
しかし、ローズは野球賭博、パルメイロは禁止薬物使用疑惑により、殿堂入りしていません。
また、ロドリゲス、ベルトレ、イチローの3人は引退から5年経過していないため、まだ殿堂入りの投票対象になっていません。
そして、プホルスは2020年のシーズン終了時点でまだ現役としてプレーしています。
なお、最多本塁打記録を持つバリー・ボンズは、四球により勝負を避けられていた影響もあり、通算2935安打で引退しています。
また、イチローの前にシーズン安打記録を保有していたシスラーは、現役が15年と短かったため、通算2812安打で現役を終えました.
② アルバート・プホルス
イチローがアメリカンリーグの新人王を受賞した2001年、ナショナルリーグの新人王を受賞したのは、セントルイス・カージナルスのプホルスです。
この年、プホルスの成績は打率.329、37本塁打、130打点という新人離れした成績を残しました。
その後、プホルスはメジャーリーグを代表する選手に成長し、2001年から2010年まで10年連続で打率3割、30本塁打、100打点を記録しています。
2012年からはロサンゼルス・エンゼルスでプレーし、2018年5月4日には通算3000安打を達成しました。
さらに、2020年9月18日には661本目となる本塁打を放ち、通算本塁打数でメイズを抜いて史上5位となっています。
まとめ
- イチローは2001年にマリナーズに入団し、以後19年間にわたりメジャーリーグでプレーした。
- 2001年より記録した10年連続200安打や、2004年に記録したシーズン262安打は、メジャーリーグ記録となっている。
- イチローは2016年にメジャーリーグ通算3000安打を達成したため、アメリカ野球殿堂入りが確実視されている。
- イチローはメジャーリーグにて走攻守で高い評価を受けており、守備ではゴールドグラブを10回受賞したうえ、通算509盗塁を記録した。