野球の試合において、野手の捕球行為が完全捕球であったのか、そうでなかったのかという議論はしばしば問題として取り上げられています。
ここでは、完全捕球と落球の境界線について公認野球規則をもとに解説していきます。
【公認野球規則 キャッチ(捕球)】
野手がインフライトの打球、投球または送球を手またはグラブでしっかりと受け止め、かつ、それを確実につかむ行為であって、帽子、プロテクターあるいはユニフォームのポケットまたは他の部分で受け止めた場合は捕球とはならない。
~(中略)~
野手がボールを受け止めた後、これに続く送球動作に移ってからボールを落とした場合は、捕球と判定される。要するに、野手がボールを手にした後、ボールを確実につかみ、かつ、意識してボールを手放したことが明らかであれば、これを落とした場合でも捕球と判定される。
完全捕球と落球の違い
次の動画をご覧ください。
- 安達選手(オリックス)の落球
- 浅村選手(楽天)の完全捕球
捕球するボールが、打者の飛球と野手からの送球という違いはありますが、捕球という行為に違いはありません。この2つの動画をご覧になって、完全捕球と落球との違いがお分かりになりましたでしょうか?
残念ながらこの動画では分かりにくかったかも知れません。
2つの動画ともに、判定が逆であってもおかしくないのでは!?と思われた方も多い事でしょう。
つまり、規則の上では、「ボールを手またはグラブで確実につかんだ」と審判が判断した場合に完全捕球となり、そうでない場合は落球と判断されるのです。
NPBでは、「捕球した際に手のひらまたはグラブを閉じれば完全捕球とみなし、そのグラブが送球する手の方を向けば送球動作とする」と定義していました。
しかしながら、動画でもあるようなプレーや判定がしばしば問題となり、2020年1月に12球団監督会議が行われ、守備側の選手が捕球から送球に移る動作で落球した際に捕球が成立していたかどうかの判定が、リクエストの対象となることが確認されました。
一塁手の捕球について
これまでの解説をご覧いただき、完全捕球についての理解を深めていただいたことと思います。その知識をもとに、次の問題をお考え下さい。
ゴロを捕った三塁手からの一塁への送球がバウンドして、一塁手はこれをグラブではなく両腕と胸とで抱きかかえるように受け止め、打者走者より早く一塁ベースに触れました。打者走者が一塁を通過した後、一塁手はボールを手で取り出し、ボールを所持していたことを審判に主張した。
この場合、打者走者は、セーフとなるでしょうか?それともアウトとなるでしょうか?
【解答】
打者走者はセーフです。
ボールを両腕と胸とで抱きとめている状態ではボールを捕球(完全捕球)しているとは認められません。
仮に、打者走者が一塁を通過する前に、両腕と胸で抱きとめたボールを手で取りだし、一塁ベースに触れていた場合は、打者走者はアウトとなります。
完全捕球まとめ!
- 手またはグラブでしっかりと受け止め、かつ、それを確実につかむ行為
- 2020年シーズンより、リクエストの対象
リクエストの対象となった「完全捕球」ですが、リクエストのないアマチュア野球において審判を行う方は、完全捕球の定義をもとに一瞬の判断でジャッジを行う必要があります。
NPBがいう「手のひらまたはグラブが閉じていたか」「そのグラブが送球する手の方に向いていたか」をポイントとして見ていただき、この2つのポイントについて自信を持って説明することができれば、抗議があった場合でも納得させることが出来るようになることでしょう。