現在、日本で行われているドラフト会議の制度は、1位のみが指名入札方式を採用し、2位以下の偶数順位はウェーバー方式を採用、3位以下の奇数順位は逆ウェーバー方式を採用しています。
指名入札方式とは、同一の選手が複数のチームから指名された場合に抽選を行い独占交渉権を得る方式で、ウェーバー方式とは、その年に行われたリーグ公式戦での順位が最下位のチームから順に選手を指名し交渉権を得る方式を言います。
【1位指名の様子】
そんな現代のドラフト会議も様々な変遷を経てこの制度にたどり着きました。
しかし、日本国憲法が保障する「職業選択の自由」を侵害するなどの意見も根強く残っており、まだまだ改革途中とも言われるドラフト会議ですが、過去には入団を希望する選手が球団を選ぶことが出来る制度も採用されていた時期があります。
逆指名制度と言われる制度です。
逆指名制度とは?
1993年から2006年まで採用された制度。
大学生・社会人を対象に希望の球団を選手側から指名することができ、ドラフト指名を経てはじめて入団交渉が可能となります。
のちに自由獲得枠・希望枠制度と制度の中身を改善しながら名前も変わっていきましたが、数々の問題を引き起こし2006年を最後に制度として廃止されました。
1992年までのドラフト会議では複数のチームから選手が指名された場合に抽選を行う入札抽選方式が採用されていました。
しかし、西武ライオンズがドラフト候補選手とその選手周辺の関係者へ多額の裏金を渡し、一度、関連企業に入社させた後に「ドラフト外」で入団させるなどの手法で選手の囲い込みを行ったことが問題視されました。
そこで、問題の温床となっていた「ドラフト外」と「練習生制度」を禁止し、そのかわりに裏金や戦力突出を防止する策として導入されたのが逆指名制度です。
逆指名制度が廃止になった理由
選手が入団したい希望球団を指名することができ、裏金問題などの解決策として満を持して導入された逆指名制度。
しかし、このようなクリーンなイメージがある一方、球団としては獲得したい意中の選手に対し自チームへの逆指名をしてもらおうと水面下での動きが激しくなります。
つまり、「どこのチームよりも高い契約金を払うから、是非とも自チームを逆指名してください」ということ。
その結果、契約金の高騰を招く結果に繋がり、金満球団に戦力が偏ってしまう恐れが出てきてしまいました。
そこで、1995年のドラフトからは、契約金については後払いシステムに変更。
契約金は1億円を上限として、成績に応じて契約金の50%を報奨金とすることが出来るように改定しています。
2001年には逆指名制度から指名順序の点のみを変更した「自由獲得枠制度」が設けられましたが、2004年には複数球団が日本学生野球憲章に反して現金を渡していた一場事件が発覚。
その事件を受け、入団枠を1人に改正し、選手と球団で入団が合意した場合にその球団に内定させる「希望入団枠制度」が導入されましたが、「逆指名制度」→「自由獲得枠制度」→「希望入団枠制度」とマイナーチェンジはしてきたものの根本的な仕組みに変わりはなく、2007年には西武ライオンズによる裏金問題が発覚した結果、希望入団枠制度もまた不正の温床になるとして2006年のドラフト会議を最後に廃止されました。
逆指名制度のまとめ
- 大学生・社会人を対象に希望の球団を選手側から指名することができる
- 裏金問題や戦力突出を防止する策として導入された
- 結局は不正の温床となるとして制度廃止
裏金問題や戦力突出を防止する策として導入された逆指名制度でしたが、この制度を使用することができる自由を与えられたのは、プロ入りする新人選手の中でもよりアマチュア野球で実績を残した大学生もしくは社会人に限られていたため、不公平感が残っていました。
選手側による球団選択の自由、金銭的な不正の防止、戦力均衡など、ドラフト制度の改革は今もなお検討が続けられています。