「一球入魂」
野球に限っての言葉ではありませんが、この言葉からイメージされるスポーツは?という問いに対し、多くの方が「野球」と答えることでしょう。
野球の試合において、その一球がストライクになるのかボールになるのかということは、投手と打者の対決においては非常に大きなポイントとなります。
フレーミングとは?
「フレーミング」とは、ストライクやボールの判定に影響を与える捕手のキャッチング技術のことを言います。
具体的には、
- ストライクゾーンに投球されたボールを確実にストライク判定にする
- ボールゾーンに投球されたボールをストライク判定に変える
といった、捕手の技術です。
フレーミングの方法には、捕球時にミットを動かす方法、体を動かす方法、捕球方法などがあり、昨今では、トラッキングデータというものを利用してフレーミング能力を計っています。
フレーミング能力を計る「トラッキングデータ」
トラッキングデータの中には、投球がホームベースのどこに到達したかが分かる座標データがあります。その到達位置がセンチ単位で分かるようになっているため、実際の判定とどのような差異が生まれたのかが定量的に分かります。
つまり、「ボールゾーンに来たのに見逃しでストライクを奪った」や「ストライクゾーンに来たのにボールと判定された」というものがデータから読み取れるようになったのです。
2018年の大リーグにおいて、このトラッキングデータを用いたチーム別ランキングが以下の通りです。
打撃をのぞき、「ストライクゾーンをボールと判定された割合」
順位 | チーム | ストライクゾーン→ボール判定割合 |
1 | ダイヤモンドバックス | 10.0 % |
2 | ヤンキース | 11.2 % |
3 | インディアンス | 11.2 % |
最下位 | レッズ | 16.0 % |
この表は、ストライクゾーンをボールと判定された割合を表しているため、数値が低い方が「ストライクゾーンをストライク」としっかり判定されたということになります。
その意味で、トップのダイヤモンドバックスと最下位のレッズとの間には6%もの差があり、仮に投手が100球をストライクゾーンに投げていたとするのであれば、6球も判定に差が出ていたという結果となります
打撃をのぞき、「ボールゾーンをストライクと判定された割合」
順位 | チーム | ボールゾーン→ストライク判定割合 |
1 | ダイヤモンドバックス | 32.3 % |
2 | ドジャース | 29.7 % |
3 | ブルージェイズ | 28.8 % |
最下位 | レッズ | 19.1 % |
この表は、ボールゾーンをストライクと判定された割合を表しているため、数値が高ければ高い方が、投手有利なカウントに持っていけるということを意味しています。
ここでも、トップはダイヤモンドバックスで、最下位のレッズとの間には13%以上の差がありました。
フレーミング技術によって、レッズの投手陣はダイヤモンドバックスの投手陣と比較し、狭いストライクゾーンで打者と対決しなければならない状況であったと読み取ることも出来るデータとなっています。
フレーミングまとめ
- ストライクゾーンを確実にストライクにする捕球技術
- ボールゾーンをストライクに見せる捕球技術
捕手のフレーミング技術は、ボールゾーンの投球をストライクに見せる技術として、試合を有利に進めるためにも非常に有効な技術です。
しかしながら、これを審判目線で見た時には必ずしも有効な技術とは言い切れません。
ボールゾーンの投球をストライクに見せる行為は、「審判を騙す行為」と捉えられてしまうケースがあるからです。
実際に、プロ野球の元審判員が審判目線でこのフレーミング技術について語っています。
「フレーミング技術というのは、やれば明らかにストライクゾーンは狭くなってしまいます。なぜなら、ミットや体を動かす行為に関してはほぼ全て分かっているからです。」
つまり、ミットや体を動かしてボールゾーンの投球をストライクに見せようとする行為は、「このキャッチャーはボールだと思っているんだな」と審判に示していることに繋がっているというのです。
判定が際どくなるようなコースであればあるほど、ストライクと判定してもらいたいという心理が働くのは当然ですが、人間は自信があれば堂々としているもの。
逆にどんなに際どいコースでも、自信を持って「ピタッ」とミットを止めて捕球した方が、ストライクと判定される可能性は高いのかもしれません。