日本のプロ野球選手は、一軍の試合に出場することが出来る「支配下選手」と、一軍の試合には出場出来ないものの、将来の支配下登録を目指し球団と育成を目的とした契約を交わす「育成選手」とに分けられます。
育成選手制度とは
現在のNPB所属球団の支配下選手枠は各球団最大で70人と決められています。
2005年、景気の悪化や企業の経営合理化などを背景に社会人野球チームの廃部が相次いだ結果、NPBではアマチュア選手の受け皿を広げるために支配下選手枠の上限の撤廃機運が高まりました。
しかしながら、支配下選手枠の上限の撤廃については反対を唱える球団もあり、上限撤廃には至らず、結果、取り入れられたのが育成選手制度でした。
育成選手制度の対象となるのは、中学、高校、大学の翌年度卒業見込みのある者、ならびにNPB以外の国内プロ野球(独立リーグ)に在籍している選手、プロ野球選手として一度は登録されながらも自由契約になった選手が対象となります。
外国人選手に関しては特に規定はありません。
なお、日本野球連盟に登録されている社会人野球に在籍する選手も対象となるが、企業所属チームの選手については、「技術向上と社会教育」という育成制度の理念から外れるため、育成ドラフトでの指名は出来ません。
育成選手の待遇
育成選手には入団時の契約金はなく、支度金として標準300万円が支払われます。
最低年俸は240万円。
「日本プロ野球選手会」にも正規会員として加入することが出来ません。
背番号は3桁を背負い、一軍の公式戦には出場することも出来ません。
当初は、1人の選手が同一球団と育成契約を結べる期間は3年間と決められていましたが、現在ではそのルールは廃止されています。
育成から大成した選手
今のドラフトは、正規のドラフトと育成ドラフトの二層構造になっています。
指名が下位になってくるとその注目度も下がっていき、育成ドラフトが行われる時には地上波ではドラフト指名された選手のインタビューやドラフトを題材にした特別番組が放送されたりしています。
翌日の新聞紙面に大きく写真とともに紹介されるドラフト上位の選手とは異なり、同じ記事の中に小さく名前だけが掲載される育成選手。
そんな育成選手の中には、育成期間を経て支配下登録を勝ち取るだけでなくタイトルホルダーになるほどの活躍を残した選手がいます。
※育成出身によるタイトル・表彰※
(支配下登録だった選手が故障などにより育成となった選手を除く)
選手名 | チーム | タイトル・表彰(年) |
山口 鉄也 | 巨人 | 新人王(2008)、最優秀中継ぎ(2009、2012、2013) |
松本 哲也 | 巨人 | 新人王(2009)、ゴールデングラブ賞(2009) |
岡田 幸文 | ロッテ | ゴールデングラブ賞(2011、2012) |
千賀 滉大 | ソフトバンク | 最多奪三振(2019、2020)、最多勝(2020)、
最優秀防御率(2020)、ベストナイン(2019)、 ゴールデングラブ賞(2019) |
甲斐 拓也 | ソフトバンク | ベストナイン(2017)、
ゴールデングラブ賞(2017、2018、2019) |
石川 柊太 | ソフトバンク | 最多勝(2020) |
周東 佑京 | ソフトバンク | 最多盗塁(2020) |
モイネロ | ソフトバンク | 最優秀中継ぎ(2020) |
育成選手まとめ!
- 「技術向上と社会教育」という理念のもとアマチュア選手の受け皿を広げた制度
- 育成選手の待遇(支度金300万円、最低年俸240万円、選手会非加入など)
- 育成からタイトルホルダーにまで成長した選手がいる
育成選手から這い上がって支配下登録を勝ち取れば、この制度があって良かったなと感じる方も多いと思います。考えられないほどの努力と練習を重ねた結果なのでしょう。
しかしながら、契約金がないなどの過酷な待遇の下でしか契約をすることが出来ない育成選手制度について、そもそも支配下登録数の上限を撤廃して通常のドラフトで指名し、その中で育成を行うことが出来れば、選手に対する待遇はもう少し改善するのではないのかと考えさせられます。ハングリー精神も大切ですが。。。