野球用語

ツーランスクイズの意味を解説!どんな場面で使える戦術なのか?

第100回全国高等学校野球選手権大会準々決勝の金足農業vs近江高校。

この試合で一躍脚光を浴びたプレーでもあるツーランスクイズ

 

ツーランスクイズとは、一度のスクイズで2点を奪う戦術のこと。

ここではツーランスクイズの意味やどんな場面で使われる戦術なのか?

ツーランスクイズを成功させる要因は?

当時の金足農業-近江高校戦のプレーを踏まえ解説していきます。

ツーランスクイズの意味を詳しく解説

ツーランスクイズは、ランナー2・3塁または満塁の場面で行われる戦術の1つです。

 

通常のスクイズは3塁ランナーだけがホームインし1点を奪う戦術であるのに対し、ツーランスクイズは一度のスクイズで3塁走者だけではなく、2塁走者までもホームに帰して2点を奪う戦術のことを言います。

プレーの一連の流れで守備側にミスが見られない場合、スクイズを行った打者には2打点が記録されます。

 

具体的には、投手の投球モーションとともに2塁走者と3塁走者がスタートを切り、打者は通常の打撃フォームからバントに切り替えゴロを転がします。

3塁走者はその間にホームインし、2塁走者は打球が転がった位置やそれを捕球する野手の動き、捕球した野手の視界に自分が入ってはいないか、野手が送球するタイミグでの自身のポジショニングなど様々な状況を瞬時に判断し、野手が送球する間に一気に3塁を回りホームインするプレーです。

 

ツーランスクイズは、サインで行うケースと通常のスクイズのサインから2塁走者の判断で行うケースの2通りがあります。

なお、ツーランスクイズのサインが出た場合であっても、2塁走者の判断で3塁で止まるケースもあります。

 

それではツーランスクイズが成功しやすい場面とはどのようなケースなのでしょうか?

ツーランスクイズが成功しやすい場面
  • 打者がチームメイトからも信頼されるバントの名手 ※3塁方向に確実に転がせる
  • 2塁走者が俊足
  • 三塁手がベースについているかベースよりも後ろを守っている
  • 二塁手と遊撃手が前進守備で2塁走者がリードを取りやすい
  • (特に少年野球では)センターを中心に外野が2塁ベースから遠く離れている。

また、試合中に投手を含めた内野手の打球処理を常に観察し、捕球から送球までの時間や肩の強さ、送球の正確性などの情報を事前にインプットしておくことでツーランスクイズが成功する確率は高くなると言えるでしょう。

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金足農業のツーランスクイズをプレー解説!

あまりにも有名なこの場面。

監督・選手のコメントとそこから読み取れる独自の見解を踏まえ、この奇跡的なプレーを解説します。

 

金足農業の中泉監督は試合後にサヨナラ勝ちの場面を振り返り、

「同点になったなと。次のランナーは正直、見ていなかった」とコメントを残しています。

打者の斎藤選手もバントを決めた瞬間、「よし追いついた」と思っていたそうです。

 

つまり、中泉監督が出したサインはツーランスクイズではなく、通常のスクイズだったことが分かります。

 

しかし、2塁走者の菊池選手はスクイズのサインが出た瞬間に「よし狙ってやる」「サードに打球が転がったらホームに行こう」とツーランスクイズを行うことを決め、走塁中には「三塁手に自分の動きは見えてない」と感じていたようです。

 

金足農業はバントやスクイズ、ツーランスクイズの練習を多く行い、練習試合でも何度も試みて来ました。2塁走者の菊池選手はその経験から、「三塁手が打球を捕った時点で自分が三塁コーチスボックスの近くまで来ていればホームに間に合う」という独自の判断基準を持っていたことも大きな成功要因と言えるでしょう。

 

反対に、近江高校の選手は甲子園という大歓声の中、練習してきたツーランスクイズ対策を思い通りに出来ませんでした。

  • 投手の林選手は野手からの「行った!」という声が聞こえずボールを外すことが出来なかった。
  • 三塁手の見市選手は送球の際、確実に打者走者をアウトにするために捕球から送球までにワンテンポ時間がかかった。
  • 一塁手の北村選手は三塁手からの送球を1塁ベースから離れずに待って捕球してしまった。

特に1点も与えられないような場面では、一塁手は打者走者を無視して本塁送球を優先するためにベースから離れて捕球すべきであり、近江高校でもその練習をしていたようですが、普段は三塁手の北村選手にとっては難しいプレーであったのかも知れません。

 

実はこの場面、2塁走者の斎藤選手が思い切ったプレーを行うことが出来た裏には心理的な要因もあったのではないかと考えています。

 

「ノーアウト満塁、1点ビハインド」というシチュエーション

通常、満塁の場面でのスクイズは本塁でのフォースアウトが成立するため成功する確率は大きく下がります。

しかもノーアウトであれば打者に打たせるのがセオリーです。

このことは守備側の近江高校も当然分かっていることで、スクイズの想定は出来てもツーランスクイズが来ることまでは想定しにくい場面でした。捕手の有馬選手や三塁手の見市選手も「ツーランスクイズは想定していなかった」とコメントしており、守備側にとっては隙が生まれやすい状況であったということが1つ。

 

もう1つは、点差が1点であったこと。

2点以上のビハインドであった場合、2塁走者は点差を縮めるための貴重な走者となります。

しかし、ここは1点差。仮に2塁走者の菊池選手がホームでタッチアウトとなった場合でも、同点で2アウト3塁、場合によっては1アウト1・3塁または2・3塁の場面が作れるという心の支えがあったのではないでしょうか。同様のケースを過去の練習試合などで経験していた場合には十分に想定の範囲と考えられます。

 

現にこの場面、斎藤選手のホームインの映像がクローズアップされていますが、1塁走者はしっかりと3塁ベースの手前まで到達しており、ホームでのクロスプレーで捕手が審判にアピールをしている時点で3塁はアウトに出来ない状況でした。

しかも、次打者は1番の菅原選手。この日は三塁打を打っていたということもツーランスクイズを決意する上で心の支えとなっていたと考えても不思議ではありません。

ツーランスクイズの意味まとめ!

ここまで述べてきたこのツーランスクイズは、非常に高度で精密かつ奇策的な戦術と言えます。

MLBでも大きな話題となりましたが、日々の反復練習や選手間の信頼関係、緻密な観察力など、日本野球を象徴するプレーの1つと言っても過言ではないでしょう。

 

金足農業のプレーで一躍脚光を浴びたツーランスクイズ。

あまりにもインパクトが強すぎた結果、警戒するチームが増え、バントやスクイズの多い日本の野球においてもしばらくはお目にかかれない貴重なプレーとなってしまったかも知れませんね。

ツーランスクイズとは
  • 一度のスクイズで2点を奪う戦術のこと
  • ランナー2,3塁または満塁の状況で行われる
  • 2塁ランナーの判断が重要
  • 非常に高度で精密かつ奇策的な戦術なため、相当な練習量が必要



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