「敬遠」という言葉自体の意味は、
表面では敬う態度で、実際にはかかわりを待たないようにすること。
かかわりを持つことを嫌ってその物事を避けること。 ※goo辞書
野球用語における敬遠もこれらの意味を十分に含んでおり、投手が打者と対戦する際に、その打者との勝負を避けて、故意に四球を与えることを言います。
公認野球規則では敬遠を故意四球と定義しています。
また、四球と敬遠の違いについても定義されており、敬遠とは、「投球する前から立ち上がっている捕手に4球目に当たるボールを、投手が意識して投げた場合」(捕手の位置は問わない)と定義されています。
ルール上の敬遠のポイントは、「投手が投球する前から捕手が立ち上がっているか」であり、それ以外の捕球姿勢の場合は敬遠ではなく四球となります。
敬遠はどのような場面で使われるのか
攻撃側に対して塁を与える敬遠は、そのまま得点の機会を与えることに繋がるため、守備側にとってはそのデメリットが直接負けに繋がらず、且つそれを補うに足るメリットがある場合にのみ行うことになります。
一般的には下記の場面で実施されます。
- 攻撃側がフォースの常態でない時(「走者二塁」「走者三塁」「走者二・三塁」など)
- 次の打者の方が投手にとって対戦しやすくアウトに打ち取る可能性が高いと判断した時
- ボールカウントが打者有利となり、ストライクゾーンへ投げることで失点のリスクが高いと判断した時
守備側は打者をアウトに打ち取ることを目的としている為、敬遠を行うということはこれに反した行為です。しかし、敬遠が抱えるデメリットを選択した方が得点を与える可能性が低く、勝利のためには適切であると判断された場合に行われる立派な戦術なのです。
敬遠に関わる注意点
敬遠は、故意に四球を与えるためにストライクゾーンから遠いところに投球する必要性があります。その意識が強くなることによって、投手ならびに捕手が見逃してしまいがちなルールが存在します。
- 捕手は、ホームプレートの直後(キャッチャースボックス内)に位置しなければならない。
※これに違反するとボークが科せられる。
- 投手は、打者に投球するにあたって、正規の投球姿勢をとらなければならない。
※これに違反するとボークが科せられる。
- 投手と捕手を除く各野手は、フェア地域ならばどこに位置しても差し支えない。
※これに違反してもボークとはならないが、投球前にファウル地域に位置していた場合、審判は注意する必要がありプレーを止めなければならない。注意する余裕がなくプレーが進行した場合は、このことにより守備側に利益が生じたと審判が判断した場合にのみ、そのプレーが無効となる。
申告敬遠とは
近年の野球界では、試合時間の短縮や投手による球数制限が問題として取り上げられるようになりました。そこで2017年にMLBが導入したのが「申告敬遠」です。
申告敬遠とは、守備側の監督が球審に対し故意四球を告げることで、投手は投球を行わずに打者に対し一塁への安全進塁権を与えます。
MLBが導入した翌年の2018年にNPBも導入し、2020年のセンバツ高校野球での導入も決まっていました(コロナウイルスの影響により大会中止)。
動画のように申告敬遠は打席の途中からでも行うことが可能で、1試合における回数制限もなく、申告後の投球数はカウントされません。
敬遠が作り出したエピソード
敬遠はこれまで数々のドラマを作ってきました。
ここでは敬遠という戦略が作り出して来たエピソードを動画で紹介します。
敬遠まとめ!
申告敬遠というルールが作られたものの敬遠(故意四球)自体がなくなった訳ではありません。
しかし、「新庄選手の敬遠球サヨナラ安打」や「敬遠サヨナラボーク」などのようなエピソードは、申告敬遠の登場によって今後は目にすることが出来なくなるかも知れません。