イチローの打撃方法として有名な振り子打法とは
打者が構えた際に投手側の足を軸足側に高く上げ、またはすり足のように移動させ、その反動を利用しながら投手側の足に重心移動を行い、バットがボールに当たるインパクトの瞬間には軸となる足が捕手側ではなく投手側の足へ移っていく打法です。
動画内の解説で、「新井コーチとの二人三脚」とありますが、この打法の発案者は二軍打撃コーチの河村健一郎氏で、その打法に理解を示し育て上げたのが一軍打撃コーチの新井宏昌氏でした。
なお、「振り子打法」という呼び名は、イチローの活躍によってマスコミに命名されたもので、当の河村氏とイチローとの間では「一本足打法」だと考えていたのです。
振り子打法は、イチロー以外にも坪井智也・福浦和也・川崎宗則などが取り入れていました。
それでは、この振り子打法を使用することによるメリットとは何なのか?デメリットはないのか?解説していきます。
振り子打法のメリット
- 非力な打者でも強い打球を打てる
- タイミングが合わせやすい
- 変化球に対応し易い
振り子打法のメリットは、打者により様々です。
共通するメリットをあげるとすれば、「非力な打者でも強い打球を打てる」という点。
強い打球を打てる仕組みは、投手側の足を振り子のように利用し重心の軸を捕手側の足から投手側に移すことで勢いがつくため。この勢いは重心を移動させる距離によって表されます。
元西武ライオンズの清原がバットを振り始めてからインパクトまでに動く重心移動の距離が5cmであったのに対し、イチローの振り子打法は清原の4倍の20cmもありました。
イメージとしては、弓で矢を射る時に、強く遠くに飛ばすためには弓を引く距離が長ければ長いほど遠くに飛ばすことが出来るという感覚に似ています。
イチローのNPB時代の成績
打率 | 安打 | 本塁打 | 死球 | 三振 | 長打率 |
.353 | 1278 | 118 | 59 | 333 | .522 |
それではなぜ、イチローのような素晴らしい結果が出ている打法であるにもかかわらず、この打法を取り入れる選手が多くならないのでしょうか。
その理由は、メリット以上にデメリットが多いという点にあります。
振り子打法のデメリット
- 速球に振り遅れやすい
- 内角攻めに弱い
- ボールを避ける動作が遅くなる
- 習得そのものが困難
これらのデメリットは、メリットであげた重心移動の距離がポイントとなります。
つまり、メリットとしてあげた強い打球を打つために作った重心移動の距離が、結果としてバットの振り出しからインパクトまでに時間を要することとなってしまい、デメリットを生み出したと言えます。
また、片足が地面から離れている時間も長くなるためボールを避けることが困難となり、死球が増え怪我をする確率が高くなることもデメリットとしてあげられます。
振り子打法を習得するために必要なこと
- スイングスピード
- リスト強化
- 強靭な足腰
これまでにあげたメリットとデメリットの要は、バットの振りだしからインパクトまでの距離(時間)です。振り子打法の習得には、メリットを残しつつデメリットを潰す必要があります。
スイングスピードを速くしリストを強化することによって、バットを振りだしてからインパクトまでの時間を短縮させミート力を向上させます。
また、軸となる投手側の足には強い負荷がかかるほか、体の開きを我慢させるための強靭な足腰が必要不可欠となります。
踏み込んだ際に足腰がフラフラではミートは困難となり、インパクトの瞬間に力も半減してしまいます。
振り子打法まとめ!
- 非力な打者でも強い打球を打てる
- デメリットも多く、習得が困難
- 習得することが出来れば、非力な選手も好成績が残せる
振り子打法を取り入れるまでのイチローは、凡フライを繰り返していました。
凡フライが多い理由としてアッパースイングを指摘する声が多い中、河村氏とイチローは、内野ゴロこそが打ち損じで、逆に凡フライはOKという考え方を持っていました。
ライナーと凡フライは紙一重という考え方が根拠としてあり、タイミング的にはあっているから、筋力と体力がつけば必ずヒットになると信じて練習を重ねた結果が振り子打法の習得に繋がったと言われています。
同様の理由で打撃に悩んでいる選手は、振り子打法を取り入れることで打撃向上の糸口となる可能性があるかも知れませんね。