皆さんはアベックという言葉をご存じでしょうか。
アベックの言葉自体は、「~と一緒に」を意味するフランス語の前置詞で、英語の「with」に相当します。かつては日本で頻繁に用いられた言葉で、「一組の男女」を意味していました。俗にいう、「カップル」と同じ意味を持ちます。
その言葉が持つ意味を元に、野球の世界でもアベックを使った言葉があります。
それが、「アベックホームラン」です。
アベックホームランの意味
1試合の中で同じチームの2人の選手が揃って本塁打を放つことをアベックホームランと言います。そのこと自体はよくある話ですが、その中でも特定の一組のペアが何度も繰り返し本塁打を放つことがあります。
プロ野球の世界では、古くは「王貞治と長嶋茂雄」のON砲や「山本浩二と衣笠祥雄」のYK砲などが有名です。
有名なアベックホームラン
1 | 王貞治 & 長嶋茂雄 | 読売ジャイアンツ | 106回 |
2 | 山本浩二 & 衣笠祥雄 | 広島東洋カープ | 86回 |
3 | 野村克也 & ケント・ハドリ | 南海ホークス | 70回 |
4 | 秋山幸二 & 清原和博 | 西武ライオンズ | 62回 |
1 | ランディ・バース & 掛布雅之 | 阪神タイガース | 16回 |
2 | アレックス・カブレラとスコット・マクレーン | 西武ライオンズ | 15回 |
3 | 王貞治 & 長嶋茂雄 | 読売ジャイアンツ | 14回 |
3 | 山川穂高 & 浅村栄人 | 西武ライオンズ | 14回 |
1 | レロン・リー & レオン・リー | ロッテオリオンズ | 28回 |
2 | 新井貴浩 & 新井良太 | 阪神タイガース | 3回 |
3 | 加藤春雄 & 加藤政一 | 近鉄バファローズ | 1回 |
王・長嶋のアベックホームラン(ON砲)
アベックホームラン通算1位の記録を持つ王と長嶋のON砲。
このON砲という言葉を最初に作り出したのは、スポーツ紙のデイリースポーツ。
通常は3番に王、4番に長嶋を配置していたが、試合によっては打順を入れ替えて3番長嶋、4番王としていたので、NO砲とする案も検討されたが、そうすると「NO・砲」となり「不発弾になってしまう」ということで却下されていたという話が残っています。
通算106本のアベックホームランは、MLBの記録(ハンク・アーロンとエディ・マシューズ(アトランタ・ブレーブス) 75本)をも上回る世界記録です。
そんなON初のアベックホームランは、天覧試合として知られている1959年6月25日の阪神タイガース戦で、最後のアベックホームランは長嶋の引退試合となった1974年10月14日の中日ドラゴンズ戦(ダブルヘッダーの第1試合)で記録されています。
最初と最後が何かしらの記念試合である点も、「日本で本当にスーパースターと言えるのはONだけ。」と言わしめる所以なのかも知れません。
アベックホームランまとめ!
- フランス語のアベックとホームランとを合わせた野球用語
- アベックホームランの世界記録は、王貞治と長嶋茂雄のON砲
- 激レア・兄弟でのアベックホームラン
一般の生活上ではアベックという言葉を耳にすることは少なくなり、男女のカップルを見て「アベック」と聞くと死語と思われるようになった現代において、「アベックホームラン」という言葉自体も死語になっているのでしょうか。
2020年6月30日、読売ジャイアンツの丸選手が横浜DeNAベイスターズ戦でホームランを放った後に岡本選手もホームランを打ちます。試合後にインタビューを受けた丸選手は、「岡本さんとアベックホームランが打てて人生の良い思い出になりました」とコメントしています。
日本人の大砲と言われる選手がMLBへ挑戦する機会が多くなり、ON砲のような記録は今後は生まれる可能性がとても低いと考えられています。
しかしながら、アベックホームランという言葉自体は、死語ではなく、今後も耳にすることがあることでしょう。