プロ野球では、中継ぎの成績をホールド数、クローザーの成績をセーブ数で評価することがあります。
例えば、日本球界では通算100ホールドを30人、通算100セーブを32人の投手が達成しており、これらの投手は中継ぎやクローザーとして活躍したといえます(2020年8月2日時点)。
しかし、100ホールド、100セーブ、そして100勝の全てを達成した日本人投手は、1人しかいません。
その投手とは、日本球界では主に先発として活躍し、メジャーリーグでは中継ぎやクローザーとして活躍した、上原浩治です。
今回の記事では、上原のメジャーリーグでの成績や活躍について解説します。
上原浩治の活躍
1998年のドラフトで読売ジャイアンツに入団した上原は、沢村賞を2度獲得するなど、日本球界を代表する投手として活躍していました。
そんな上原は、2008年のオフシーズンにFA権を行使し、2年1000万ドルという契約でボルチモア・オリオールズに入団します。
やがてシーズンが開幕すると、上原はデビュー戦で初勝利を記録するなど、安定した投球を続けていました。
下の動画は、5月10日のヤンキース戦で好投したときの動画です。
しかし、6月23日のフロリダ・マーリンズ戦で右肘を痛めて故障者リストに入り、その後復帰することなく、シーズンを終えてしまいました。
さらに、2010年のスプリングトレーニングでは、左太もも裏を痛めてしまい、故障者リストに入ったまま開幕を迎えてしまいます。
それでも上原は5月に復帰を果たしますが、先発ではなく中継ぎに配置されました。
しかし、上原は中継ぎとして好投を続けたため、次第にクローザーとして起用されるようになります。
最終的に、上原は43登板で13セーブ、防御率2.86という好成績を残しました。
2011年、オリオールズがクローザーとしてケビン・グレッグを補強したため、上原は再び中継ぎを務めることになります。
それでも、上原はさらに成績を上げ、7月にはワールドシリーズ制覇を目指していたテキサス・レンジャーズにトレードで移籍しました。
そして、移籍後の9月には防御率には10登板で防御率1.23を残し、レンジャーズのプレーオフ進出に貢献しています。
しかし、プレーオフでは3試合連続で本塁打を打たれるなど不振に陥り、ワールドシリーズのロースターからは外れてしまいました(レンジャーズはワールドシリーズで敗退)。
その後、上原は2012年もレンジャーズに残留し、開幕から好投を続けます。
シーズン途中に故障者リストに入ることはありましたが、上原は37試合に登板し、防御率1.75を記録しました。
そして、上原はシーズン後にFAとなり、ボストン・レッドソックスと1年契約を結びます。
すると、2013年には中継ぎとして開幕から好投を続け、6月21日にはクローザーに指名されました。
その後、上原はさらに調子を上げ、日本人投手としては最長となる26試合連続無失点、球団記録となる34人連続アウトを記録します。
さらに、9月20日はレッドソックスの地区優勝を決めるセーブを挙げ、9月27日にはリリーフとして球団史上初の100奪三振を記録するなど、歴史的なシーズンを送りました。
上原はプレーオフでも好投を続け、プレーオフ史上最多タイとなる7セーブを挙げただけでなく、ワールドシリーズにて胴上げ投手となりました。
その後、上原はレッドソックスのクローザーとして定着し、2014年には26セーブ、2015年には25セーブを挙げます。
2015年の5月10日には日米通算100セーブを記録しましたが、シーズン終了後にレッドソックスがメジャーリーグを代表するクローザー、クレイグ・キンブレルを補強したため、上原は中継ぎに転向することになりました。
それでも、上原はまずまずの成績を残し続け、2016年には7セーブ、18ホールド、防御率3.45を記録しています。
2016年のシーズン終了後、上原はFAとなりますが、シカゴ・カブスと1年600万ドルの契約を結びました。
上原はカブスにて中継ぎに定着し、2セーブ、14ホールドを記録します。
しかし、シーズン終了後、上原はメジャー契約のオファーを受けることができなかったため、巨人に復帰しました。
なお、上原は2018年の7月20日の広島東洋カープ戦でホールドを記録し、日本人投手として初めての通算100ホールド、100セーブ、100勝を達成しています。
上原のプレースタイル
上原の最大の武器は制球力です。
レンジャーズに所属していた2012年には36イニングでわずか3四球、レッドソックスに所属していた2013年には74.1イニングでわずか9四球しか許しませんでした。
特に、2012年には43奪三振を記録しており、この年のK/BB(奪三振よ与四球の比)14.33は、35イニング以上投げた投手ではメジャーリーグ歴代3位の記録となっています。
上原の年度別成績
年度 | チーム | 勝利 | 敗戦 | 登板 | セーブ | 投球回 | 奪三振 | 防御率 |
1999 | 巨人 | 20 | 4 | 25 | 0 | 197.2 | 179 | 2.09 |
2000 | 巨人 | 9 | 7 | 20 | 0 | 131.0 | 126 | 3.57 |
2001 | 巨人 | 10 | 7 | 24 | 0 | 138.2 | 108 | 4.02 |
2002 | 巨人 | 17 | 5 | 26 | 0 | 204.0 | 182 | 2.60 |
2003 | 巨人 | 16 | 5 | 27 | 0 | 207.1 | 194 | 3.17 |
2004 | 巨人 | 13 | 5 | 22 | 0 | 163.0 | 153 | 2.60 |
2005 | 巨人 | 9 | 12 | 27 | 0 | 187.1 | 145 | 3.31 |
2006 | 巨人 | 8 | 9 | 24 | 0 | 168.1 | 151 | 3.21 |
2007 | 巨人 | 4 | 3 | 55 | 32 | 62.0 | 66 | 1.74 |
2008 | 巨人 | 6 | 5 | 26 | 1 | 89.2 | 72 | 3.81 |
2009 | BAL | 2 | 4 | 12 | 0 | 66.2 | 48 | 4.05 |
2010 | BAL | 1 | 2 | 43 | 13 | 44.0 | 55 | 2.86 |
2011 | BAL/TEX | 2 | 3 | 65 | 0 | 65.0 | 85 | 2.35 |
2012 | TEX | 0 | 0 | 37 | 1 | 36.0 | 43 | 1.75 |
2013 | BOS | 4 | 1 | 73 | 21 | 74.1 | 101 | 1.09 |
2014 | BOS | 6 | 5 | 64 | 26 | 64.1 | 80 | 2.52 |
2015 | BOS | 2 | 4 | 43 | 25 | 40.1 | 47 | 2.23 |
2016 | BOS | 2 | 3 | 50 | 7 | 47.0 | 63 | 3.45 |
2017 | CHC | 3 | 4 | 49 | 2 | 43.0 | 50 | 3.98 |
2018 | 巨人 | 0 | 5 | 36 | 0 | 34.2 | 24 | 3.63 |
NPB | 11年 | 112 | 67 | 312 | 33 | 1583.2 | 1400 | 3.02 |
MLB | 9年 | 22 | 26 | 436 | 95 | 480.2 | 572 | 2.66 |
- BAL:ボルチモア・オリオールズ
- TEX:テキサス・レンジャーズ
- BOS:ボストン・レッドソックス
- CHC:シカゴ・カブス
各年度の太字はリーグ最高
上原にまつわるエピソード
① 上原のチームメート
上原はメジャーリーグにて9年間プレーし、その間に4球団に所属したため、多くの日本人選手とチームメートになっています。
まず、レンジャーズ時代にはダルビッシュ有や建山義紀のチームメートになりました。
特に、上原と建山は東海大学付属仰星高校の同級生でしたが、当時は建山がエースで、上原は控えだったようです。
また、レッドソックス時代には田澤純一とチームメートとなり、ともにレッドソックスのワールドシリーズ制覇に貢献しました。
当時のレッドソックスでは、主に8回を田澤かクレイグ・ブレスロウ、9回を上原が担当していたようです。
② 通算100ホールド、100セーブ、100勝
先ほども触れたように、上原は通算100ホールド、100セーブ、100勝を記録した唯一の日本人投手です。
しかし、メジャーリーグではトム・ゴードンという投手がこの記録を達成しています。
1988年にカンザスシティ・ロイヤルズでデビューしたゴードンは、1993年から1996年に4年連続で11勝以上を記録するなど、先発投手として活躍してきました。
しかし、レッドソックスに在籍していた1997年に、チームの事情でクローザーに転向すると、1998年にはリーグ最多となる46セーブを挙げます。
その後、ゴードンは故障や不振に苦しみますが、2004年にニューヨーク・ヤンキースに移籍してからは、中継ぎとして活躍するようになりました。
特に、ヤンキースに在籍していた2004年と2005年には合計159試合に登板し、マリアノ・リベラにつなぐ中継ぎとして、合計69ホールドを記録しました。
その後もゴードンはフィラデルフィア・フィリーズで活躍し、2008年にはメジャーリーグ史上初となる100ホールド、100セーブ、100勝を達成しました。
ゴードンは2009年を最後に引退しましたが、通算で138勝、158セーブ、110ホールドという成績を残しています。
まとめ
- 上原は2009年にオリオールズに入団し、その後はレンジャーズ、レッドソックス、カブスで活躍した。
- 2010年から中継ぎに転向し、2013年にはクローザーとしてレッドソックスのワールドシリーズ制覇に貢献した。
- 上原は日本球界復帰後の2018年、日本人投手として初の通算100ホールド、100セーブ、100勝を記録している。
- 上原の最大の武器は制球力であり、クローザーとして活躍した2013年には、9四球しか許していない。