みなさんは「バレル」という言葉を聞いたことはありますか。
多くの方がイメージをするのは、ニュースなどで石油価格を表す際の単位として使われる、「1バレルあたり〇〇円」というものではないでしょうか。
昨今の野球界は、「革命」ともいうべき速さで理論のデータ化が進んでおり、これまで定説であった考え方や技術的なものが、そのデータを元に次々と塗り替えられているという現象が起こっています。
その1つとして挙げられるのが、この「バレル」という指標です。
ここでは、今話題の「バレル」について、解説を行って参ります。
バレルって何なの?
AIなどによる情報システムの成長はすさまじいものです。
野球界では「スタットキャスト(Statcast)」に代表されるように、目に見えることがなかった考え方や技術面の定説が、数値として見えるようになり、技術向上に多大な影響を与え、野球というスポーツの真の姿を解き始めています。
その中でバレルは、膨大な打球に関するデータにより明らかにされた指標の1つとされ、バレルには「バレルゾーン」というものがあり、そのゾーンに入った打球は打率8割、長打率2.300を超えると言われています。
つまり、「バレル」とは、打球の優劣を判断する指標の1つであり、その中身は、理想の打球速度と角度で打つことによって安打や本塁打になりやすいということを表したものなのです。
バレルゾーン 打球速度と角度の関係
打球速度が速いと安打になりやすいという事は一般論として理解されていることと思います。
確かに、MLBでは打球速度が150km(初速)を超えたあたりから安打になる確率が高くなり、特に本塁打を含む長打に関しては、急激に上昇しているというデータもあります。
※安打にはポテンヒットなどもあるため、実際には打球速度が110kmの時点でも安打確率は上がっています。
次に打球の角度です。
いくら打球の速度が速くても、野手の届く範囲に打球が飛んでしまっては安打とはなりません。
そこで、打球の角度も同時に表した「バレルゾーン」が注目されています。
これは打球速度の上昇とともにバレルとなる角度の範囲も広くなるという性質を持っています。
打球速度が158km/hだった場合にバレルとなる角度の範囲は、26~30度の範囲のみとなりますが、打球速度が187km/hにも到達すると、その角度は、8~50度と一気に広がります。
引用:http://thinkaboutbb.blog.jp/archives/20065994.html
バレルとは打球の優劣を表す指標であるため、打者はバレルの打球を増やすためにはどのような練習を行えば良いかなどを考える必要があります。
大谷選手とバレル
メジャーで活躍中の大谷翔平選手の打撃を語る際にも、このバレル指標がよく取り上げられます。
大谷選手はここまで36度打席に立ち、打球速度169km/h以上を8本マークしています(昨年は175打席で15本、2021/4/12時点)。
打球角度についても、2018年の1年目シーズンから順に、12.3度、6.8度、9.2度となっていましたが、大谷自身も「角度がつけばもっと良かった」と打球の角度についてコメントを残すことがありました。それが2021年には16.2度となり、23本の打球のうち7本がバレルゾーンを通過。このバレルゾーン率30.4%という数字は、とても優れた数字です。
バレルまとめ
- 打球の優劣を表す指標
- 打球速度と角度で表される「バレルゾーン」
- 数値的な根拠を元に技術向上に取り入れられる指標
幼少期から野球を学んできた方々は、「ボールは上からたたけ!」と教えられて来ていないでしょうか。
その理由はいくつかあり、バックスイングからトップを作り、ボールまでの最短距離でバットを振るというものや、ボールをたたくことによってゴロを転がし、場合によっては野手のエラーを引き起こすという考え方が主な理由であったことでしょう。
日本のプロ野球で使用する球場は人工芝であることが多いため、ゴロを転がすこともまた作戦の1つにもなりますし、アマチュア野球においてもこれらの考え方を否定するものではありません。
しかしながら、これまでの経験や感覚をもとにした指導や練習方法から、より具体的に、より根拠を持った技術向上を図るために、バレルなどのデータをもとにした見える形での練習方法の取入れがこれからは必要になることでしょう。